2012年12月議会・代表質問(12月7日)_4

2024-02-14代表質問:中村誠治 議員

森林環境の保全について

次に森林環境の保全についてお尋ねします。
わが国では、戦中・戦後に森林の大規模な伐採が行なわれ、その後、1950年代半ばから、天然林を人工林に転換する「拡大造林」などによる植林が進められてきました。その結果、現在では森林の蓄積量は当時の3倍に増え、量的には充実した状態にあると言われています。しかし、もともと人間が手を加えることを前提として植林されたスギやヒノキの人工林は、長期にわたる木材価格の低迷などによる林業の不振によって、その多くは手入れが行き届かず、森林が有する多面的機能が発揮できない状態になっています。

このため2001年には、「林業の安定的発展」を第一の目的としてきた、それまでの「林業基本法」が改正され、「森林の多面的機能の持続的な発揮」を第一の目的とする「森林・林業基本法」が制定されました。本県では、この新たな「基本法」の趣旨に沿う形で、2008年に「森林環境税」が導入され、事業開始から4年が経過します。「森林環境税」は導入後、5年を目処に検証することとなっており、このほど、「森林環境税の収入状況や、この税を活用した事業の検討結果」が取りまとめられました。

森林環境税は導入当時、県内の荒廃森林を2万9千ヘクタールと推計し、10年間でこれを健全な森林に再生することを目標に制度設計されています。導入後、4年間の実績は、手入れが必要とされる県内のスギやヒノキなどの人工林約12万8千ヘクタールのうち、約3万9千ヘクタールを調査し、さらにこのうちの約2万ヘクタールを荒廃森林として特定するとともに、特定した荒廃森林の約1万ヘクタールについて、間伐を行なったとしています。この結果、森林環境税を活用した荒廃森林の再生事業の進捗率は34%と公表されました。そこで。

1点目に、森林環境税の導入が議論された2006年の9月議会では、わが会派の吉村敏男議員が税の導入を検討するために公表された「荒廃の予測」を基に質問を行なっています。質問の内容は、「荒廃予測」に従うと、本県の荒廃森林は10年後には5万3千ヘクタール、20年後には7万9千ヘクタールに拡大すると予測されているので、10年間で目標の2万9千ヘクタールを再生しても、2万4千ヘクタールの荒廃森林が残ることになり、こうした事実は「森林環境税に対する県民の理解と協力を得るために、丁寧に説明する必要がある」というものでした。

当時の「荒廃予測」に従えば、1年間で荒廃森林は約2千400ヘクタールずつ拡大することとなり、計算上は森林環境税導入後の4年間で9千600ヘクタールほど、拡大したことになりますが、これは、森林環境税を活用し、4年間に約1万ヘクタールについて荒廃森林の再生を行ったとしている事業実績とほぼ同じ数値となります。

そこで第1に、4年を経た荒廃の実態はどのような状況になっているのかお聞きします。また、荒廃森林の再生事業は、事業主体が市町村となっています。しかし、個別の市町村では歴史的にも森林との関わり方が様々であることから、再生事業の取り組みにもバラつきがあるように思います。そこで、県内の農林事務所管内ごとの再生事業の取り組み状況など、荒廃森林の再生事業を地域的に見た場合、どのような実施状況にあるのかお聞きします。

第2に、今述べた実施状況や、市町村ごとの取り組みの現状を加味した上で、これまでの事業成果を知事がどのように評価しているのかお聞きします。また、今後の森林環境税のあり方を検討する際には、こうした視点を加える必要があると思いますが、このことについて知事がどのように考えているのかお聞きします。

2点目に、「森林環境税事業評価委員会」は、今回の提言で、これまでの協定締結期間20年の主伐制限を見直し、林齢や植林などを条件に、主伐を認めるよう、事業内容の一部見直しを提言しています。20年の協定締結期間は、民有林に税を投入することに対する県民の理解を得るため、私的財産としての活用を制限し、森林の公益的機能を維持する期間として設けられたと思いますが、この「事業評価委員会」の提言について、その意図を含め、知事がどのように考えているのかお聞きします。

また、森林環境税を活用して間伐を行なった人工林を、その後どのようにしていくかについては、森林の多面的機能のうち、木材生産機能を重視し、「木材生産林」としていくという選択肢と、針葉樹と広葉樹を混在化させ、「生物多様性の保全」なども重視した「環境林」としていくという選択肢があると思います。今後の森林環境税を活用した事業のあり方として、森林の形状や木材の搬出条件などを考え、「生産林」としていくところと、「環境林」として残すところを明確に区分した上で、事業を進めていくことが必要だと考えますが、このことに対する知事の考えをお聞きします。

3点目に、これまで森林環境税を活用した事業は、森林の多面的機能のうち、主に水資源涵養、土砂災害の防止に重点を置き、山間部の人工林で取り組まれてきたと思います。「事業評価委員会」は、海岸林の整備についても、松くい虫被害が拡大しているとして、対策に森林環境税を活用すべきだと提言しています。古くからの人工林であるクロマツなどの海岸林は、毎年、台風被害を受ける本県にとって、高潮や潮風被害を防ぐ重要な役割を果たし、また美しい景観を提供するなど、永く県民に親しまれる存在となっていることから、整備に森林環境税を活用することは妥当だと考えます。

そこで、本県では、これまでにどのような被害対策に取り組み、被害の実態がどのような現状にあるのかお聞きします。また、その上で、森林環境税を活用した被害対策については、どの程度の規模を予定し、どのような方法で行なうのか、被害対策の具体的な中身についてお聞きします。

4点目は、放置竹林の問題です。竹は生長のスピードが速いため、容易に樹木を覆い森林の荒廃を招くこと、また根が深く入り込まないため、大雨や地震などで大規模な地滑りを起こす危険性があることなどから、放置竹林対策は重要な課題だと思います。しかし、竹は放置しておくと年に7%も面積が増えると言われるほど成長が早く、伐採するだけでは放置竹林の拡大を防ぐことは容易でなく、竹の利活用を産業化することが効果的だと言われています。本県では2011年度から3ヵ年計画で、竹をパルプ素材として活用し、その売却益と伐採費用との差額に森林環境税をあてて助成する「放置竹林対策モデル事業」が取り組まれています。そこで、このモデル事業のこれまでの成果と、今後、このモデル事業を含めて放置竹林対策を、どのように発展させていくことを考えているのかお聞きします。

5点目に、国は「木を使うことにより、森を育てる」という目的から、2010年に「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」を制定しました。同法は、全ての自治体が率先して木材需要の拡大に取り組むよう、「木材利用方針」を作成することを求めており、本県においても、今年1月に「木材利用方針」が策定されています。そこで、本県の「木材利用方針」では、県が整備する公共建築物等の木材利用目標を2010年度の6千立方メートルを、2021年度までの10年間に1.3倍の8千立方メートルにする目標数値が示されていますが、この目標数値の根拠と、目標実現のための具体策をお聞きします。また、最近建設された県管理の公共施設として、公文書館や特別支援学校などがありますが、これらの公共施設や公共土木工事において、木材がどのように使用されているのか、また、その使用量とその内、具体的に県産材がどれくらいの割合で、使用されているのかお聞きします。

6点目に、県の「総合計画」では、県内製材工場の需要に占める県産材シェアを2010年度の25%から2016年度までに倍増させ、50%とする目標が示されています。昨年度の本県の「林業白書」によると、原木の総需要に占める県産材の割合は、ここ数年、頭打ちの状況にありますが、知事は県産材の需要動向をどのように分析され、具体的にどのような方法で目標数値を実現させるのかお聞きします。


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