2013年2月議会・代表質問(3月5日)_6

2024-02-14代表質問:岩元一儀 議員

アジア戦略について

次に、本県のアジア戦略についてお尋ねします。
近年、急速な経済発展を遂げているASEAN(東南アジア諸国連合)に世界が注目しています。生産拠点や巨大な消費市場として、「チャイナ・プラス・ワン」とも呼ばれ、私たちの会派もかねてより、本県経済発展の観点から強い関心を抱いてきました。特に、ミャンマーやカンボジアといった「後発国」における可能性の大きさについて、昨年来、代表質問で知事に指摘し、企業への現地情報の提供など支援体制の整備を求め、実現を図ってきたところです。

こうした問題意識と経緯を踏まえ、私たちは、残された後発国であるラオスに着眼しました。ASEAN唯一の内陸国で、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国・雲南省に国境を接しており、インドシナ半島のメコン地域を東西・南北に走る幹線道路の「結節点」として物流の可能性の大きさが指摘されています。その一方、「森の国」と称されるように森林などの自然に恵まれ、環境や農業を発展のキーワードとする人たちもいます。

私たちは1月下旬から2月上旬、ラオスの首都ビエンチャンなどを訪ね、計画投資省のソムディ・デゥアンディ大臣や全国商工会議所の幹部と会見し、今後の本県とラオスの交流のあり方について意見を交換しました。さらに、進出している日系企業やJICAラオス事務所、農業、教育などの現場を調査しました。そこで分かったことは、ラオスは本県にとっても大きな潜在力を秘め、パートナーとして自治体外交を積極的に展開すべき、ということでした。

計画投資大臣との会見で、大臣は昨年10月に本県を訪れ、小川洋知事らと交流し、ラオス経済・投資セミナーに参加したことを踏まえ、「多くの企業がラオスに関心を持っていただき、うれしく思いました」と謝意を表明しました。そのうえで、「ラオスの投資情報を収集し、福岡県で広めてほしい。JICAともよい協力関係を築いており、今後ますます福岡県との協力を増やしていきたい」と述べ、地方自治体との緊密な連携に意欲を示しました。私たちとしては、経済発展に向けた強い意志を感じたところです。大臣の意志の背景には、今年2月2日に実現したWTO(世界貿易機構)加盟や、2015年に域内貿易が拡大するASEAN共同体の発足があります。ラオス商工会議所の副会長もこうした経済的な「転機」を念頭に、私たちに対し「今回のわが会派の訪問は、ラオスの経済・社会の発展で重要な局面を迎えているところであり、両国の人間同士が話し合うのは非常に有意義」と話していました。

ラオスで特に注目すべき産業が、農林業・農産物加工業です。私たちが商工会議所で意見交換をした際、家具協会や木工協会、手工芸品協会、農産物加工品協会の各団体も参加していました。本県の大川市の木材事業協同組合とラオス木材組合との間では、既に「覚書」が交わされ、相互交流促進をはかることで合意しています。このこともあってか、ラオス側からは私たちに対し、「ラオスの木材は海外に輸出できる自負がある。技術・資金の協力があればともに成長していける」と、大川市からの投資に大きな期待を寄せる発言もありました。しかし、この「覚書」は相互に訪問した際に、移動や宿舎などの手配に便宜をはかるといった内容の、いわば交流の「入り口段階」の合意事項を記したものであり、大川市とラオス側とで、認識にズレがあることを感じました。

また、私たちは現地で、日本人が起業した農産物加工会社「ラオディ」も訪ねましたが、サトウキビ農園とラム酒製造工場を直結させ、ラオス人の人たちを雇用し、経営を軌道に乗せようとしていました。さらに、本県が進める「グリーンアジア国際戦略総合特区」との関係で言えば、JICA(国際協力機構)ラオス事務所が現在、最も力を入れて取り組んでいるプロジェクトに、首都ビエンチャンを舞台にした「エコ・シティ」の実現がありました。このプロジェクトは、ラオスは、豊富な水力を活用して周辺国に売電することで、「東南アジアのバッテリー」と呼ばれていることなどから、ラオスの「競争力」の源泉は豊かな自然資源と環境であるとの認識のもとで、この特性を都市開発の根幹にすえる計画となっています。中でも、具体的に動き出しそうとしているのが、電気自動車(EV)の導入です。ODA(政府開発援助)により、街中にEVの充電器を設置し、EVをビエンチャンの市民ら利用者に貸与するモデルプロジェクトを実施します。税制など法制度の整備も進めながら、普及の目標として掲げる「2020年に10%、2030年に50%」の実現を目指します。ラオスだけ見ると、人口が少なく市場規模は小さいが、先に述べたように東西・南北の経済回廊の結節点として「物流の拠点」の力を秘めていることから、ラオスが日本のEVのショールームとなり、インドシナ半島全体に日本のEVが広がることが期待されます。ラオス政府からは正式な協力要請が提出されており、まさに政府が2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」で目指す、アジア各国市場の新たな需要に応え、日本企業のアジア展開を後押しするものです。

EV導入計画を契機として、「環境」を軸としたビエンチャンの都市開発に様々な角度から日本が積極的に関与していく際、地方自治体が培ってきた経験や先進技術による協力が非常に重要になると考えます。またEVに関しては、本県で製造される自動車も、中長期的にはガソリン車からEVになっていくことが考えられます。これらのことから今後、農林業や農産加工業、環境に関する分野などで、交流が活発化するのではないかと感じました。

県では、来年度から、バンコク事務所の人員を増強する方針が示されていますが、これはわが会派が、かねてから求めていたものであり、この方針が示されたことを評価します。また、これを機に、ラオスとの経済面での関わりを持つべきだと考えます。そこで、県内企業のラオスにおけるビジネス展開の可能性と、今後の支援について、知事の考えをお聞きします。

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