2020年(令和2年)6月定例県議会 報告 6

2024-02-14

6月代表質問(質問要旨、答弁要約)

二、自然災害への対応について
1.豪雨災害被災地の振興策について
○ 鉄道復旧を断念し、BRT延伸の決断に至った経緯及び東峰村の皆様の思いについて
 知事が復旧会議も開かず鉄道復旧を断念し、BRT延長という決断に至った経緯を問う。また、熱心な郷土愛を持ち地域振興を目指している東峰村住民にどうこたえるのか、問う。

【知事答弁】鉄道での復旧を目指し、東峰村長・添田町長をはじめ県議会と一緒に国あるいはJR九州に要望などの活動を重ねてきた。また、これまでの経験を活かし、様々な人脈を駆使して、私自身やれることは精一杯やってきた。しかしながら壁が厚く今年2月の国会審議で国土交通大臣と鉄道局長から「最終的には鉄道会社の判断」という最終的な国の判断が示された。鉄道での復旧を目指し行動してきたが力が及ばず申し訳なく思っている。
今ある状況の中で、地域の皆様にとって一番いい形で解決するためには、
・従前の鉄道と比べて、地域の皆さんにとって、より一層利便性が高まるものであること
・交通ネットワークが長期に継続できるものであること
・観光や経済の振興につながるものであること
との観点や、大分県側が鉄道や全線BRTでの復旧を求めていないことなどを総合的な判断が必要であり、その結果、苦渋の策としてBRT延伸案の提案に至ったもの。
 先月24日の住民説明会での私からの提案を受け、26日には澁谷村長が、東峰村としてこの案を受け入れる旨、表明された。東峰村の皆様にとって厳しい苦渋の選択だったと思う。また、添田町の寺西町長もBRTで復旧する案について了承されており、先日8日、町議会でその旨を報告された。
 方針を取りまとめていただいた村長、村議会、町長、町議会をはじめ、住民の皆様に改めて感謝申し上げる。これまで力添えをいただいた県議会、「九州の自立を考える会」の皆様にお礼申し上げる。これまでの経緯、そして東峰村、添田町の決断の重みをしっかりと受け止め1日も早い復旧を成し遂げるべくJR九州との協議に全力を尽くしていく。

○ BRT延伸の実現に向けての今後の進め方について
 JR九州青柳社長にどのような覚悟と決意でBRT延伸を要請したのか、社長は合意されたのか、今後の復旧会議の開催など、BRT延伸実現に向けてのロードマップを問う。

【知事答弁】今月2日、栗原議長とJR九州本社を訪ね、青柳社長に対し、地元の意見がまとまってきたこれまでの経緯、そして東峰村と添田町の決断の重みを受け止め、
・1日も早く彦山駅から宝珠山駅までを専用道とするBRTで復旧し、これを将来に亘り維持すること
・定時性・安全性の確保をはじめ、BRTを活用し今後の観光振興、地域振興に生かしたい地域の思いを受け止め、一緒になって利便性 の向上、地域振興に取り組むこと
を要請した。
 青柳社長から「BRTの延伸案については、最大限に尊重し、検討していきたい。地域にBRTにしてよかったと言われるような、より良い案にしていきたい」と発言があった。これに対し私と栗原議長から、改めて、「地元の皆さんはあくまでもベースは鉄道復旧。それに代わるものとして、やむを得ず、BRTの延伸案を了承したものであり、延伸案でなければ地元は納得しない」旨申し入れたところ。
 これまでの経緯、そして東峰村、添田町の決断の重みをしっかりと受け止め、早期に復旧会議で結論が得られるよう、JR九州との協議に全力を尽くしてまいる。

○ 日田彦山線沿線地域振興基金に対する考えについて
 日田彦山線沿線自治体の振興のため基金が設けられる予定。地域振興策に充当する場合、当該自治体にとって自由度の高いものとすべきだが、知事の考えを問う。

【知事答弁】東峰村と添田町の両地域において、自然や景観を生かした観光振興、伝統産業の振興などを通じて経済の活性化を図り、それを地域の発展につなげていくために長期的な取組みが必要である。将来にわたる支援を安定的に行うため、基金の創設を提案させていただいた。
 基金を活用して実施する振興策については、今月1日に東峰村、添田町からの要望、県議会の「日田彦山線復旧問題対策協議会」における議論を踏まえ、両町村と協議しながら検討し、地域の皆様、県議会と一緒になって取り組んでまいる。

○ 被災地における農地の再生と農業・観光の振興について
 朝倉市の振興には、農地の再生、果物のブランド産地としての農業振興と観光振興が重要と考えるが、知事の考えを問う。

【知事答弁】被害が甚大であった河川沿いの農地について、9河川15区域で区画整理型の復旧を進めている。県では、市に農業土木職員を派遣し、市とともに工事着手に向けた準備を進めているところ。また、県では、市やJAと被災した柿や梨の営農再開に加え、収益性が高く、早期に収入が得られるイチゴなどの園芸作物の導入を促し、これを組み合わせた複合経営を進めているところ。さらに、今年度から新たに地区外からの参入者も対象に加え、ハウス施設や省力機械の導入を支援することとしている。県としては、農地の早期復旧を目指すとともに、収益性の高い園芸作物の導入や、新たな担い手の確保を進め、被災地域における農業の振興を図ってまいる。
 朝倉市は、ぶどうや柿などのフルーツ狩りが盛んなことに加え、県内でも有数の温泉地である原鶴温泉を有する魅力ある観光地でもある。県では、原鶴温泉などを組み込んだ旅行商品の造成支援を行うとともに、「あさくら・大刀洗周遊サイクルルート」を設定し、ルート周辺の飲食店や観光スポットにおいて、サイクルスタンドの設置など受入環境の整備を進め、地域の魅力向上に努めてきたところ。今後は、新型コロナウイルス感染症の状況を見極めながら、宿泊費の一部を助成する「福岡県宿泊割(仮)」のほか、温泉地キャンペーンやフルーツ狩り、三連水車といった観光スポットを周遊するスタンプラリーなどを実施することで、観光振興を図ってまいる。

○ 朝倉市に対する被災地支援策について
 被災地住民への引越費用助成などを最後の住民まで支援すべき、またコミュニティ再興などソフト面の支援も不可欠。この点を踏まえた知事の被災地支援策を問う。

【知事答弁】被災者の生活再建を支援するため、住宅被害の程度に応じた支援金支給や住宅再建時の借入金の利子補給、引越費用及び民間賃貸住宅に入居する際の初期費用の助成を行っている。今後とも、災害復旧工事が完了していない、長期避難世帯の認定が解除されてないなど、やむを得ない理由で再建できない方がおられる限り、支援を続けてまいる。
 朝倉市は、甘木・朝倉地区と杷木地区の2か所に「地域支え合いセンター」を設置し、相談・声掛けなどの見守り活動、被災住民の地域交流の支援などを行っている。県は、同センターに対する国庫補助を受けるため、朝倉市への助言や国との協議を行っている。さらに、朝倉市をはじめ、市町村職員や自治会役員等を対象に、地域コミュニティの活性化研修会や活動事例報告会を開催し、地域コミュニティ活動の担い手育成も図っている。併せて、今年度、朝倉市は、被災後に転居し新しい環境で生活再建を図る被災者と、その方々を受け入れる地域住民との交流活動を支援することとしており、その取組みに対しても助成を行う。今後も、朝倉市と一緒になって、被災者お一人お一人に寄り添った必要な支援を行ってまいる。

2.非常時の県職員派遣について
○ 大規模災害発災時の派遣体制について
 大規模災害時に、県土整備部での必要人材の派遣体制はどのような体制か。農林水産部はどのように支援を行っているのか。また、今後の大規模災害に対する知事の決意を問う。

【知事答弁】県土整備部では、大規模災害の被災調査や応急復旧を迅速に行うため、河川や道路などの災害業務に精通した職員を事前に登録し、現場からの要請を待つことなく適切な職員を派遣し、災害対応を強化する体制を整えているところ。さらに、被災自治体からの要請に応じた適切な職員派遣も行うこととしている。
 農林水産部では、農地や農業用施設の災害復旧は被災自治体が主体となることから、まず所管する農林事務所の農業土木職員が現地に赴き、被害調査や復旧計画の作成を被災自治体に代わって実施するなどの支援をしている。また、所管する農林事務所だけでは対応が困難な場合には、ほかの農林事務所や本庁から必要な職員を派遣することとしている。
 今後も、大規模災害が発生した場合には、迅速に災害復旧に対応できるよう、復旧事業の内容に応じ、技術職員を派遣し、被災自治体を支援してまいる。

○ 技術職員の計画的な採用について
 技術職員の年齢構成が大きく偏っている。専門的知識を要する職員は計画的に平準化して採用し、非常時にも即応できることが必要。知事の考えを問う。

【知事答弁】技術職員の採用に当たっては、定数の増減や退職者数とともに、被災した県・市町村への派遣予定者数をあらかじめ見込んだ上で、次年度の採用数を決定している。採用数の平準化や災害への備えのために職員を増やすことは、平常時に過剰な人員を抱えることになりかねず、慎重な検討が必要であると考える。
 このため、大規模災害の発生により、迅速に復旧・復興に取り組まなければならないときには、次年度採用予定者の早期採用や臨時的な採用試験を行ってきたところである。
 また、国においては、大規模災害発生時に、迅速に被災市町村へ技術職員を派遣できるよう、全国の都道府県が技術職員を確保する制度を新たに創設し、今年度から、その運用が開始された。本県からは、派遣可能な技術職員数として10人を国に報告しているところである。県としては、これまでの取組みに加え、国の新たな制度も活用しながら、災害からの復旧・復興も含めた公共事業の執行体制の確保に万全を期してまいる。