2021年(令和3年)6月定例県議会 報告 2

2024-02-14

民主県政県議団 代表質問 登壇者 冨田 徳二

一、県政推進の基本方針について
1.知事の政治姿勢
問 今後の県政運営について
 私は、常に県民の皆様を真ん中に置き、県民の皆様のために何をなすべきか、しっかりと地に足をつけて考え、県政を推進していきたいと考えている。
 小川前知事は県民生活の安定、安全、安心を第一に、各分野に目配りのきいた堅実な取組を進められた。これにより、本県は元気に発展してきたと思っている。この小川県政のバトンをしっかり受け継ぎ、本県をさらに発展させていく、これを基本と考え、引き続き、地方創生の基本である「誰もが住み慣れたところで働き、長く元気に暮らし、安心して子どもを産み育てることができる」地域づくりを着実に進めてまいる。
 その上で、「次代を担う『人財』の育成」、「世界の舞台で勝負できる福岡県」の実現、「ワンヘルスの推進」といった、本県の将来の発展につながる新しい施策に挑戦してまいる。
 
問 県総合計画改定に向けてのビジョンとスケジュールについて
 次期総合計画では、只今申し上げた地方創生の基本である地域づくりを着実に進めるとともに、「世界を視野に置き」、「未来を見据えて」目指すべき福岡県の姿を明らかにし、施策の方向性を示していきたいと考えている。
 「世界を視野に置く」では、世界で活躍できるグローバルな人材を育てていくほか、輸出の拡大、国内外からの企業の立地、観光誘客の推進など、産業分野において世界と勝負し、選ばれる福岡県を目指してまいる。また、ワンヘルスの世界的な先進地を目指してまいる。
 「未来を見据える」では、コロナ禍における人々の意識や行動の変容、人口の減少・少子高齢化の進展、デジタル化、脱炭素社会の実現に向けた取組など、社会経済状況の変化を的確に捉え、時代を先取りした新たな施策を展開して福岡県をさらに元気に発展させてまいる。
 同時に、これからの福岡県を支える人材の育成に取り組んでまいる。
 これから、県民の皆様とともに福岡県の未来の扉を開いていきたいと考えている。
 スケジュールについては、先月31日、第1回総合計画審議会を開催し、次期計画の策定について諮問を行った。今後、検討の段階に応じ、総合計画審議会でご審議いただき、来年2月議会での議案の提案に向け、検討を進めてまいる。

問 「県民幸福度日本一」の評価について
 前知事は、幸福の考え方は人によって様々であり、これを的確にあらわすことは難しいことから、県民の皆様から直接、幸福実感や施策に対するニーズを把握し、目標の達成度を確認しながら、施策の充実・強化に努めてこられた。
 そのような考えのもと、様々な分野に目配りのきいた堅実な取組を進められ、県民生活の「安定」「安全」「安心」を向上させるための施策を総合的に展開され、福岡県を発展に導いてこられたと考えている。

問 政策目標やスローガンについて
 私が目指す福岡県をひとことで申し上げると、「県民の皆様が安心して、たくさんの笑顔で暮らせる県」である。
 
問 国及び県内市町村との関係強化について
 県では、従前から、国や、県内市町村と情報や意見の交換を行いながら、必要な施策を進めてきたが、県の人口の半分を占める両政令市とは、様々な課題がある中で、連携やコミュニケーションが不足しているとの指摘もあった。
 そのようなことも踏まえ、私は、知事に就任後、ただちに両政令市長と面談し、今後の連携、協力を確認した。その後も、両市長とは頻繁に連絡を取り合い、率直な意見交換をしている。また、その他の市町村長に対しても、電話やウェブ会議などを用いて、昼夜を問わず連絡を取り、様々な協議を行ってきた。これからも、トップ同士の連携を大切にしてまいる。
 そして、同様に大切なことは、県と市町村の職員同士が日頃からコミュニケーションを円滑にし、協力して仕事を組み上げていくことである。
 今後とも、県と市町村とのコミュニケーションを深め、より密接に連携することによって、チームとしての力を発揮し、課題の解決に向けて取り組んでまいる。
 国に対しても、副知事時代から私は、省庁の幹部や県選出国会議員の皆さんと県政に関する様々な分野の協議を行ってきた。引き続き、全国知事会や政府への提言・要望の場等も活用しながら、県の考え方を各省庁や国会議員の皆さんに伝え、さらなる関係の強化に努め、本県の発展につなげていきたいと考えている。
 
問 本県財政の現状について
 歳出面では、近年の急速な高齢化の進展により、社会保障費が増嵩するとともに、4年連続で発生した豪雨災害の復旧・復興対策に伴う公債費も増加している。歳入面では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う県税の大幅減収が今年度も見込まれている。
 こういったことから、財政調整基金等三基金を取り崩しながら財政運営を行わざるを得ず、令和2年度最終予算ベースでは、三基金の今年度末残高は平成以降最少の231億円と見込まれるなど、大変厳しい財政状況にあると認識している。
 
問 財政改革プランについて
 安定した財政を取り戻すためには、まずは、新型コロナウイルス感染症を早期に収束させ、県民の皆様の安全・安心を守り、地域経済を立て直す必要がある。その上で、将来の発展のための種をまき、芽を育てていくことで、税源を涵養し、ポストコロナ時代の好循環をつくっていくことが大事であると考えている。そのような考えの下、今年度の予算編成を行っているところである。
 今後もメリハリの効いた施策を打っていくためには、財源の確保が必要である。現在の財革プラン策定以降、4年連続しての豪雨災害や新型コロナウイルス感染症の流行など、社会経済状況は大きく変化している。こうした変化の中で、被災地の復旧・復興、コロナで打撃を受けた県民への支援、地域経済の立て直し、税源の涵養にもつながる新たな成長戦略などの施策の展開が必要になると考えられる。
 次期プランでは、このような対策が実施できるよう、リモート化・デジタル化など社会経済状況の変化を捉えた事務事業の見直しや、さらなる民間活力の活用などによる財源の確保に取り組んでまいりたいと考えている。
 
問 ワンヘルスの推進について
 新型コロナウイルス感染症をはじめ、SARS、MERSなど新興感染症の多くは人獣共通感染症である。これに対応するためには、人と動物の健康、そして環境の健全性は一つというワンヘルスの理念に基づく取組が重要である。これは、国連が掲げるSDGsの目標の多くにも関わっている問題である。
 本県では、平成25年に全国に先駆けて、福岡県獣医師会と福岡県医師会がワンヘルスに関する学術協定を締結されたほか、28年に「第2回世界獣医師会・世界医師会“One Health”に関する国際会議」が北九州市で開催され、ワンヘルスを実践する段階に進めることを決意する「福岡宣言」が世界に向け発信された。さらに、昨年12月には議員提案により、「福岡県ワンヘルス推進基本条例」が全国で初めて制定された。
 こうした動きを受け、県では、人獣共通感染症対策の推進や県民に対するワンヘルスの理念の普及啓発を図るため、ワンヘルスに関するシンポジウムや国際フォーラムを開催するとともに、このたび、ワンヘルスを総合的に推進する専任の室を新たに設置したところである。このように、本県はワンヘルスに先駆的に取り組んできた。
 コロナとの戦いに打ち勝った後も、次なる新興感染症、再興感染症に備えていかなければならない。そのためには、本県におけるワンヘルスの取組をさらに加速させることが重要であると考えている。
 これから、福岡県がワンヘルスの世界的先進地となることを目指し、ワンヘルスを実践する拠点の整備、世界トップクラスの研究者による国際会議の開催など、ワンヘルスの取組を実践していくことにより、県民の命と健康を守ってまいる。
 
問 福岡県ワンヘルス推進基本条例に基づく行動計画の策定について
 私は、本条例が全国で初めて制定されたことに鑑み、県の取組の指針となる行動計画を全国のモデルとなるようなものにしたいと考えている。
 具体的には、ワンヘルスの理念を実践する中核拠点として、保健環境研究所と動物保健衛生所とが連携した上で、根拠法令がない愛玩動物や野生動物に関する試験検査、分析測定、調査研究を実施するワンヘルスセンターの設置について盛り込むこととしている。
 また、今年度実施するアニマルセラピーなどワンヘルスに取り組む民間団体についての調査を踏まえ、人の心の健康づくりと生活の質の向上のために愛玩動物を活用する施策を掲げるとともに、教育委員会及び私立学校等の関係者と連携し、学校におけるワンヘルス教育の実施を促進してまいりたいと考えている。
 今後、計画案を取りまとめの上、条例第15条に基づく、県、国の関係機関、市町村、医師会、獣医師会等による協議会において、専門的な見地から議論いただくとともに、県議会のご意見も踏まえ、来年3月までに行動計画を策定してまいる。
 
問 「ワンヘルス宣言事業者登録制度」と「福岡県ワンヘルス認証制度」の創設について
 登録事業者におけるワンヘルスの取組及び事業活動への活用等を促進するため、「福岡県ワンヘルス推進基本条例」第16条に基づき、ワンヘルスの推進に取り組む旨を宣言した事業者を登録する宣言事業者登録制度を創設する。
 事業者に対し、県のホームページをはじめ県の広報媒体や事業者向けのメールマガジン、SNSなどのほか、市町村、商工団体など支援機関、関係団体を通じた個別の周知などにより、制度の趣旨を分かりやすく伝え、登録の呼びかけを行う。また、ワンヘルスの取組を「見える化」するための分かりやすいマークや制度の活用を促進する優遇策を導入してまいる。
 条例に定める基本方針の中では「環境と人と動物のより良い関係づくり」を掲げており、ここで目指すものは、「健康を支える食の安全・安心の推進」である。安全・安心な食の生産には、有害な物質に汚染されていない環境、家畜の健康、また、生産工程が直接確認できる地元での生産が重要であると認識している。
 これを推進するための認証制度を創設してはどうかとのご提案であるが、認証制度については、県民・事業者に登録制度との違いを理解してもらう必要があることや、審査項目をどのように設定するかなど検討すべき課題が多くある。
 このため、まずは、ワンヘルスの取組及び事業活動への活用等を促進する登録制度についてしっかり制度設計を進めてまいる。