2021年(令和3年)6月定例県議会 報告 4

2024-02-14

民主県政県議団 代表質問 登壇者 冨田 徳二

一、県政推進の基本方針について
5.子どもの貧困ゼロに向けた社会づくり、社会的・経済的に厳しい状況を強いられている方の支援について
問 子どもの貧困ゼロの政策を掲げた背景と県内における子どもの貧困の状況について
 私は、今後、福岡県が発展していくためには、次代を担う「人財」を育成することが重要であると考えている。そのために、子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されることなく、また、貧困が世代を超えて連鎖することなく、すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していける福岡県を実現したいと考え、この政策を掲げたところである。
 本県の17歳以下の生活保護率や小中学校の就学援助率については、ここ数年改善傾向にあるものの、全国平均と比べて高い水準が続いていることから、本県の子どもの貧困状況は全国より厳しいと考えられる。
 コロナ禍における直近の状況については、生活に困窮している子育て世帯の相談窓口として県が設置している「子ども支援オフィス」には、昨年度、1,419件の相談が寄せられ、これは一昨年度の約2.5倍となっている。その相談の内容は、収入減のほか、食費、光熱水費、家賃やローンの支払いに困っているとの相談が急増していることから、経済的に困窮する子育て世帯が増加していると推測される。

問 子どもの貧困ゼロに向けた取組について
 貧困が世代を超えて連鎖することなく、すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していけるよう、「教育の支援」、「生活の安定のための支援」、「保護者に対する就労の支援」及び「経済的支援」の4つの柱により、施策を総合的に推進してまいる。
 教育支援では、進学・就職のための相談支援の継続や家庭における学習支援のため、今年度からタブレットを貸与することとした。
 生活の安定のため、子ども支援オフィスの職員を増員し、町村役場での出張相談会を実施するとともに、「福岡県子ども食堂ネットワーク」との連携を進め、支援を必要とする子どもを早期に発見する取組を強化してまいる。
 保護者の就労を支援するため、医療事務等の資格取得支援を継続するほか、子育て等により時間的制約がある保護者に向けて、短時間、託児付きで学べる職業訓練の定員を拡充した。
 経済的支援としては、先日議決いただいた「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」等、コロナ禍において新設された制度の周知、早期支給に努めてまいる。また、今年度から、子ども医療費支給制度の助成対象を入院、通院ともに中学生まで拡大し、子育て世帯の医療費負担の軽減を図っている。

問 養育費相談の実績と今後の対策について
 養育費相談の実績については、県内3か所に設置している「ひとり親サポートセンター」に、「養育費について取り決めせずに離婚したが、どうしたらいいか」などの相談が、昨年度193件寄せられた。
 また、弁護士による月1回の集中電話相談「養育費・ひとり親110番」には、77件の相談があり、弁護士への相談が、相談者の都合の良い時間と場所で無料で受けられる「弁護士相談クーポン」は44枚配布した。
 今年度は新たに、「ひとり親サポートセンター」に多く寄せられる質問について、24時間365日対応し、養育費相談を含め適切な支援に案内できるよう、センターのホームページに、AIチャットボット機能を導入する。
 現在、国においては、協議離婚時の養育費に関する取決めの義務化や公的機関による立替払い制度の導入などについて、検討が行われている。県としては、養育費の確保を促進するため、国において制度的な対応が講じられるよう、提言してまいる。

6.災害対策について
問 防災対策の取組み状況について
 本県では、ハード・ソフト両面から防災対策の充実・強化に取り組んでいる。ハード面については、過去に被災した箇所をはじめ、道路、河川等の公共土木施設について、日常の巡視・点検を行うほか、出水期前にも再度点検を行い、護岸や路肩など対策が必要な箇所については、対応したところである。
 また、河川については、計画的な改修を進めているところであるが、昨年、浸水被害があった37河川については、河道掘削や堤防かさ上げなど実施可能な水害対策を完了させている。
 さらに、全県域において浸水被害を軽減するため、排水ポンプ車を、福岡・北九州・筑豊・筑後南部の4地域にそれぞれ1台、浸水被害が続いている筑後北部地域に2台目を配置した。
 ソフト面については、県民に防災意識をしっかりと持っていただくため、新聞広告や防災ホームページ、広報番組などを通じて、
 ①平時は、ハザードマップで地域の危険度やコロナ禍における避難の注意点等を確認すること、
②大雨や台風等の際には、避難指示が発令されたら危険な場所から必ず避難することを、
広く呼び掛けている。
 また、県民に、地図上で気象警報や避難情報を分かりやすくお知らせするため、防災ホームページの改修を進めている。改修後のホームページでは、新型コロナウイルスの感染防止対策を踏まえた、迅速で適切な避難行動をとっていただけるよう、避難所の開設状況に加え、避難所の混雑状況も掲載することとし、今月中旬に運用を開始する予定である。
 市町村に対しては、災害対策基本法の改正や避難所における感染防止対策の徹底等について、副市町村長会議や防災担当課長会議、防災担当者個別ヒアリングにおいて説明するとともに、市町村の広報紙やホームページなどを活用して、住民への周知を徹底するよう、繰り返し助言してまいる。
 
問 災害対策基本法改正の周知について
 今回の法改正により、避難情報が分かりやすく整理され、警戒レベル3では高齢者等避難、警戒レベル4では避難指示が発令されることになった。このような避難情報が発令された際は、危険な場所にいる方は、必ず避難していただくことが重要である。
 県では、この改正内容をお知らせする啓発ポスターを、本庁や出先機関に掲示するとともに、市町村、社会福祉施設、病院等、関係機関にも掲示を依頼した。併せて、新聞広告や防災ホームページ、SNS、ラジオスポット放送などを活用して、広く県民にお知らせするとともに、市町村に対しては、住民への周知を徹底するよう、助言しているところである。
 さらに、先月28日の私の定例記者会見において、避難情報が変わったことを説明するとともに、避難指示等が発令された際には、危険な場所から必ず避難していただくよう呼び掛けたところである。
 今後も、災害発生の恐れが高い場合にあらかじめ行っている県民への注意喚起の際など、あらゆる機会を捉え、避難指示等が発令されたら危険な場所にいる方は必ず避難することを、繰り返し周知徹底してまいる。
 
問 福祉避難所の設置状況と体制や物資の整備状況について
 本県では、すべての市町村において福祉避難所が指定されており、その数は本年3月末現在、669か所となっている。
 体制や物資の整備状況については、県では、「福祉避難所設置・運営に関するマニュアル」に、要配慮者に必要となる物資・器材や専門人材を示し、市町村に対しその確保を図るよう助言している。これを踏まえ、各市町村では、車いすやポータブルトイレ、紙おむつ、生理用品などを備蓄するとともに、関係機関との物資の調達や人材の派遣の協定を締結している。
 県としては、福祉避難所における物資・器材や専門人材の不足に備え、直ちに支援できるよう、福祉用具の事業者団体や災害派遣福祉チームDWAT(ディーワット)を構成する福祉関係団体との災害時協定を締結している。また、災害時に福祉避難所が円滑に機能するよう、市町村に対し、研修会において要配慮者の避難支援や福祉避難所運営の優良事例を紹介し、福祉避難所運営訓練を実施するよう、引き続き強く働きかけてまいる。

問 福祉施設等の福祉避難所への指定について
 高齢者施設や障がい者施設等を福祉避難所に指定することは、必要な設備や物資・器材、専門人材があらかじめ整っていることから、配慮を要する方の安全安心な避難に資するものと考える。市町村が指定する福祉避難所の本年3月末の現状は、669か所のうち、600か所が福祉施設等である。  
 一方で、避難にあたり配慮を要する方の数に比べ、福祉避難所での受け入れ可能者数は、まだまだ十分ではない。このため、県としては、市町村に対し研修会や個別訪問を通じて、避難者に身近な福祉施設等を活用した、福祉避難所の追加指定を働きかけてまいる。また、市長会、町村会と協議の上、多くの福祉避難所で、市町村域を超えた広域的な避難者の受け入れが進むよう仕組みの構築に努めてまいる。

7.性暴力の根絶に向けたさらなる取組みについて
問 本県の性犯罪の動向及び認識について(警察本部長答弁)
 平成30年と令和2年を比較すると、性犯罪の認知件数については、381件から228件と、153件減少している。検挙件数についても、297件から219件と、78件減少しているが、検挙率は、78%から96.1%と、18.1ポイント上昇している。また、人口10万人あたりの認知件数は、全国と比較した場合、平成30年のワースト2位から5位、そして8位と年々改善傾向にある。
 しかしながら、性犯罪の根絶に向けては厳しい状況であることに変わりはないと認識しており、引き続き、各種対策を強力に推進していかなければならないと考えている。
 
問 全国の動向及び全国にさきがけて本県が条例を制定した意義について
 一昨年の2月議会で議員提案により制定された、性暴力根絶条例は、法令及び条例では全国で初めて「性暴力」を定義するとともに、
①被害者に二次的被害を生じさせる行為の根絶
②性暴力根絶及び被害者支援に関する総合的な教育の実施
③再犯防止に向けた加害者の社会復帰支援
などを規定している。
 これまで、国や他県から、条例制定の経緯や施策の実施状況に関する調査を受けるとともに、全国紙で報道されるなど、全国唯一の条例として注目を集めている。
 本県への調査後、国は、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を策定し、本県の取組みを参考とした子どもの性被害を防止するための安全教育の実施をはじめ、各都道府県のワンストップ支援センターに電話がつながる全国共通短縮番号の導入、SNS相談の実施など、性暴力根絶に向けた取組みを進めることとしている。
 こうしたことから、本条例は、性暴力を根絶する上で、先導的役割を果たしており、大変意義深いものと認識している。
 
問 さらなる取組について(警察本部長答弁)
 平成31年2月に「性暴力を根絶し、性被害から県民等を守る条例」が制定されたことに伴い、県警察では、性犯罪に対する警察の強い意志を示すため、令和2年から、三大重点目標を「性犯罪の抑止」から「性犯罪の根絶」に改め、予防・検挙・被害者支援対策を推進しているところである。県警察としては、多発時間帯における警戒活動の強化や科学捜査の推進等の各種対策を継続しつつ、
・ 防犯アプリ「みまもっち」のリニューアルによる普及促進、SNS広告を活用した啓発動画の配信等、被害の多い年代に重点を置いた広報啓発の推進
・ 性犯罪等の前兆と見られる声掛け・つきまとい等の事案を含め、連続発生の可能性を念頭に置いた客観証拠の収集等による被疑者の早期検挙の徹底
・ 被害者支援センターとの更なる連携によりカウンセリングなどを積極的に実施するなど、より充実した被害者支援活動の推進
といった取組の強化を図っている。
 今後も魂の殺人とも言われる性犯罪の根絶に向け、強力に取り組んでいく。

問 二次被害を生まない教育・啓発について
 県では、条例に基づき、小・中・高等学校などに性暴力対策アドバイザーを派遣し、性暴力となる行為、被害後の影響、性暴力にあったときの相談先のほか、性暴力に対する偏見や無理解による二次被害を生まないための心がけなどについて講義を行っている。今年度は200校程度にアドバイザーを派遣し、来年度は全校に拡大していく。
 また、教職員に対しては、二次被害を生まないよう、今年度から、県立学校の校長会や市町村教育長会議、県私学協会を通じ、被害にあった子どもとの適切な接し方を周知徹底する。
 現在、県民や事業者向けに、性暴力の加害者にならないことはもとより、二次加害者や傍観者にもならないよう、県のホームページなどで広報を行っている。これに加え、被害者の約7割を占める若年女性を対象としたSNS広報や事業所等の研修用動画の作成・配信といった啓発にも取り組んでいく。