2012年12月議会・代表質問(12月7日)_2

2024-02-14代表質問:中村誠治 議員

雇用対策について

次に、雇用対策についてお尋ねします。
総務省の「労働力調査」によると、今年4月から6月期の就業者のうち、パート、アルバイト、契約、派遣などの非正規労働者は、約1775万人で、就業者全体の34%を超えています。この中で近年、とりわけ問題となっているのは、若年層の非正規雇用が大幅に増えていることです。今年度の「学校基本調査」では、今春大学を卒業し、就職した約35万7千人のうち、約2万2千人は非正規雇用で、この人数を進学も就職もしなかった者や、アルバイトなどで一時的な仕事に就いた者の人数と合わせると、「卒業者の約23%が不安定な雇用に就いている」と、文科省は指摘しています。

これまで、わが国の産業の発展は、企業が新卒者を正規労働者して雇用するとともに、長期的な視点から「中核人材」にまで育て上げ、技術力を維持・向上させてきたことによります。また、こうした労働者層は分厚い中間層を形成し、安心して仕事に打ち込むことによって、内需の拡大と社会保障制度の安定に寄与してきました。しかし、若年層を中心とする非正規雇用の拡大は、中間層の縮小につながり、雇用に対する将来不安からの購買意欲の減退や未婚率の上昇などによって、経済の低迷からの脱却をさらに困難にさせることや、社会保障制度を不安定にさせることが予想され、社会全体で「良質で安定的な雇用」を創り出すことが、わが国の成長にとって、重要なカギになっていると思います。

こうしたことを背景に、労働法制の分野では有期雇用から無期雇用への転換を規定する改正労働契約法が、来年4月から施行されることになり、また内閣総理大臣の下に、労働界、産業界の代表をはじめ、有識者などが参加する「雇用戦略対話」は、今年6月に若者の雇用を社会全体で支援していくことで合意し、その具体策となる「若者雇用戦略」を発表しています。そこで。

1点目に、今年9月現在の本県の常用労働者数は約170万人となっていますが、本県における非正規雇用の実態を知事がどのように把握しているのかお聞きします。またその上で、知事は本県の活性化と発展を図る立場から、若年層を中心に非正規雇用が拡大している現状に対し、どのような問題意識を持っているのかお聞きします。

2点目に、今年9月末現在の高校新卒者に対する求人倍率は全国平均が1.01倍、本県では0.86倍となっており、前年同期より若干、改善されているものの、昨年同様の厳しさが予想されます。また、2007年版「就業構造基本調査」では、高卒者で上級学校に進学しなかった者のうち、正規雇用として採用される比率は、男性で57.6%、女性で48.4%となっており、上級学校への進学を目指し、浪人等をした者を除いても、高卒者の少なくない割合が、非正規労働者として職業生活をスタートしている実態が示されています。その後の職業生活の中でも、非正規労働者は正規労働者に比べ、能力開発の機会が不足し、人的資本形成の点で大きな差が生じることから、来春卒業予定の高校生が、できる限り正規労働者として職業生活をスタートできるよう、就職支援を行う必要があると考えます。そこで、お聞きします。第1に、高卒者が正規労働者として就職できない原因について、高卒者の職業意識・能力の不足や、就職開拓が不充分さなどが指摘されていますが、このことについて、どのように考えているのか 、知事ならびに教育長にお聞きします。

3点目は、「雇用戦略対話」で合意した「若者雇用戦略」についてお聞きします。「若者雇用戦略」では、大卒・高卒の就職率は9割を超えているものの、中退者、無業者、一時的な仕事に就いた者、早期離職者を合わせると高卒の3人に2人、大卒の2人に1人は、学校から職場に円滑に接続していないとし、社会に出る前に必要な能力や態度を育て、労働法制や就職支援の仕組などについて教えるキャリア教育の充実を、高校や大学などの初年次から、図る必要があるとしています。

わが会派は、2010年に高校再編に伴い新設された高校を視察しました。その中の一校、総合学科高校として新設された福岡魁誠高校では、「生徒自らが、進路希望を見据えた科目選択を行なうことで、積極的に授業に臨む姿勢が見られる」とした上で、「それだけに、早い段階での進路指導が重要」との説明を受けました。魁誠高校となる前の2000年度は卒業生280人のうち63人が進路未定のまま、卒業していますが、魁誠高校となって7期生目の卒業生を出した昨年度は、268名の卒業生のうち、進路未定者はわずか5名となっており、進路決定の着実な改善が図られています。総合学科高校は、「普通科」における就職希望者への対応、「職業学科」における進学希望者への対応が不充分となっていることから、両方を統合する新たな学科として設置されたと聞いていますが、同校のように、学校生活から職業生活への接続を、高校初年次から意識した取り組みが重要だと考えます。

そこで、本県の公立高校は「普通科」、「職業科」、「総合学科」に大別することができますが、それぞれの高校において、どのようなキャリア教育が行なわれているのか、具体的な内容と、その効果を教育長がどのように判断されているのかお聞きします。

4点目に、国では雇用戦略に関する重要事項について、労働・産業・教育関係者、有識者および政府関係者が、意見交換と合意形成を図ることを目的として、2009年に「雇用戦略対話」を設置し、「若者雇用戦略」や、「雇用戦略・基本方針」などで合意しています。そのうち、「若者雇用戦略」ではキャリア教育について、学校教育の枠を超え、広く社会的な参画を得て、取り組むことが重要だとの認識を示し、地域に密着したキャリア教育と、その支援を行なうために、都道府県などの地域ごとに、自治体、教育機関、産業界、労働団体などが参画する「地域キャリア教育支援協議会」を設置するよう、具体的な提言を行なっています。本県においても、厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、国と同様に関係者が意見交換と合意形成を図り、一丸となって雇用対策に取り組む場を設置することが必要だと思いますが、このことに対する知事の考えをお聞きします。またその上で、「支援協議会」の設置について、知事がどのように考えているのかお聞きします。

5点目は、改正労働契約法についてお聞きします。改正法は、同じ職場で5年を超えて働いているパートや契約社員を対象に、本人が希望すれば無期雇用への切り替えを企業に義務付けるもので、日本の労働法制で有期から無期への転換が規定されたのは初めてのことだと聞きます。また同法では、無期契約と実質的に変わらない条件下で、仕事をしている有期契約労働者に対して、会社は合理的な理由がない限り、一方的な雇い止めはできないとする「雇い止め法理」の明文化や、賃金、教育訓練、福利厚生、安全衛生管理などの面で、有期契約労働者を差別することを禁止する規定も盛り込まれ、このうち、「雇い止め法理」については、既に今年8月から施行されています。厚労省の「雇用政策研究会報告書」よると、15歳から34歳までの学生を除く非正規労働者、約410万人で、このうち正規雇用への転換を希望している人は、4割強の約170万人と推計されており、改正法を正規雇用への転換の促進、有期労働契約労働者の雇用の安定と処遇改善につなげていくことが重要だと思います。しかし、改正法の課題として、勤続5年の計算は施行日を起点に始まることや、6ヶ月の空白期間があれば勤続年数がゼロに戻る「クーリング期間」が認められたことなどから、無期雇用への転換権の発生する手前での雇い止めや、「クーリング期間」を濫用する規制逃れが発生する懸念も否定できません。そこで、正規雇用への転換を促進させ、有期労働契約労働者の雇用の安定と処遇改善を図っていくためには、労働者側はもとより、企業者側にも改正法の趣旨や内容が広く周知されることが必要だと思いますが、県として、このことにどのように取り組むのかお聞きします。


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