2021年(令和3年)6月定例県議会 報告 5

2024-02-14

民主県政県議団 代表質問 登壇者 冨田 徳二

二、新型コロナウイルス感染症対策について
1.医療提供体制の確保と医療現場への支援について
問 ワクチン接種の見通しについて
 本県では、4月12日以降、政令市を皮切りに、市町村において高齢者の優先接種が始まった。4月下旬までは、高齢者向けのワクチンが、人口規模に応じたものではなく、各都道府県一律に配分されたため、本県のように人口規模が大きい都道府県は、人口当たりのワクチン数が少量となり、5月上旬までは、1回目の接種率が低い状況だった。このため、3週間後の2回目の接種率が全国に比べて低くなっていると考えられる。
 高齢者の接種については、県としても県内2か所に広域接種センターを設置するなど、市町村を支援し、7月末までに完了する見通しである。
 また、医療従事者等の接種については、ほとんどの方が1回目の接種を受けており、また、2回目の接種を終えている方も約7割となっていることから、概ね今月中に完了する見通しである。
 それ以外のすべての方の接種については、昨日の党首討論で、菅首相が「10月から11月にかけて希望する国民全てに終えることを実現したい」旨、述べられたが、国からは、今後のワクチンの具体的な供給計画は示されていない。このため、具体的な供給計画を速やかに示すよう、これまで、私から全国知事会を通じて国に要望したところであり、今後のワクチン接種を円滑に進めるため、引き続き要望してまいる。

問 ワクチンの優先接種の対象について
 県では、ワクチン接種の対象外となっている子どもに業務上接触する機会が多い方や、クラスターが発生した場合の影響が大きい施設等の職員を、優先的に接種することとしている。具体的には、保育士や教職員、放課後児童クラブの職員、消防団員のほか、介護サービス事業所や障がい福祉サービス事業所、児童養護施設の職員などを対象に検討を進めている。

問 潜在看護師の復職支援について
 県では、「福岡県ナースセンター」において、医療機関等に対する看護師の無料職業紹介を行っている。
 その結果、6月3日現在の新型コロナウイルス感染症に関連した求職者は613人で、求人51施設278人に対し、宿泊療養施設43人、PCR検査センター26人、ワクチン接種会場18人等、合計127人の方が就職している。
 また、看護協会において、潜在看護師が不安なく復職できるよう、ワクチン接種の手法を学ぶ講習会を6月に計8回実施することとしたところ、定員を大きく超える受講希望があった。
 このため、県では、より多くの方が受講できるよう、7月中に同様の講習会の開催を、大学に委託して計画しているところである。これにより、多くの潜在看護師の早期復職を支援し、ワクチン接種に従事する医療従事者の確保を図ってまいる。

2.感染封じ込め対策強化に向けた体制整備について
問 対策本部事務局における職員の勤務の状況と人員の増員について
 4月中旬以降の新規陽性者数の急増に伴い、宿泊療養施設の更なる拡充や県独自のワクチン広域接種センターの開設など、新たな課題への対応のため、事務局の業務量は大幅に増加した。
 そうした中で、土日や休日においても、患者情報の管理、宿泊療養施設や病院との調整など、平日と同様の業務に当たる必要があるため、在籍者の3割から5割程度の職員が出勤している。その結果、事務局職員の時間外勤務は、本年4月の平均が86.3時間、5月の平均が102.3時間となり、5月には、12名の職員が200時間を超えるなど、大変厳しい状況となった。
 こうした状況を踏まえ、5月中旬には、新たな宿泊療養施設の開設準備や飲食店の認証制度の導入等に対応するための増員を行うとともに、市町村が行うワクチン接種を支援するための班体制の拡充を行った。さらに、6月1日には、高齢者以外の方へのワクチン接種に関し、県による広域接種センターの更なる設置を検討するため、25名体制の「ワクチン接種推進室」を新たに設置した。この結果、年度当初に確保した71名体制から、過去最大の105名まで人員を拡充したところである。
 今後も、新型コロナウイルス感染症を封じ込めるため、感染状況や業務量に応じて、必要な体制をしっかり確保してまいる。

問 職員の負担軽減のための業務の見直しについて
 今年度実施した対策本部事務局の体制強化に当たっては、異動元の所属において新たに欠員が発生することから、人事課から各部に対し、会計年度任用職員の任用や業務の中断・縮小等を行うことにより、所属職員の負担軽減に努めるよう指示を行った。
 加えて、5月21日に開催した「県庁における働き方改革推進本部会議」において、江口副知事から各部長に対し、大変厳しい状況にある所属については、思い切った事業の見直しや実施時期の調整等を行うようあらためて指示したところである。
 これを受け、各部では、係内の事務分担の見直しや係を超えた業務調整にとどまらず、Web会議システムの活用や会議時間の短縮などの事務改善に取り組んでいる。 また、各種啓発イベントや説明会、調査事業等の中止や実施時期の変更、審議会等の開催回数の見直しや書面開催などの工夫を行いながら、職員の業務負担の軽減に努めているところである。
 今後も、職員の声に耳を傾けながら、業務の見直しの状況を把握し、改善を図ることで、職員の負担軽減を図ってまいる。加えて、今年度は、大卒程度が対象のⅠ類行政の職員採用試験に、初めて早期採用枠を設けたところであり、当該試験合格者20名程度を10月1日付けで採用する予定である。これにより、必要な人員を確保し、全庁的な執行体制の整備・強化を図ってまいる。

問 保健師の人員確保について
 県では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い増大した疫学調査等の業務に対応するため、これまで保健所間での応援や会計年度任用職員の任用、市町村からの応援等により、必要な保健師を確保してきたところである。
 加えて、県では、感染症対応業務に従事する保健師13名の増員を含め、今年度の採用試験で保健師を27名採用する予定である。採用試験の実施にあたっては、多くの方に受験していただけるよう、今年度から受験年齢の上限を29歳未満から39歳未満に引き上げるとともに、教養試験を廃止したところである。
県としては、引き続き必要な保健師を確保し、保健所の執行体制の整備を図ってまいる。

問 抗原簡易キットの活用について
 議員ご指摘のとおり、国は、5月28日に変更された基本的対処方針の中で、早期に陽性者を発見し、クラスターの大規模化や医療のひっ迫を防ぐ観点から、医療機関や高齢者施設、大学、職場等において、発熱、せき、のどの痛み等軽い症状を有する者に対し、抗原簡易キット等を活用した検査を実施するよう促すとしているが、詳細についてはまだ示されていない。
 抗原簡易キットは、他の検査方法に比べて感度が低いことや原則として無症状者への使用は推奨されないことなどに留意が必要であるものの、簡便・迅速に検査結果が出るといったメリットがあり、陽性者の早期発見につながることが期待される。このため、県では、国から抗原簡易キットの活用に関する詳細が示され次第、医療機関や高齢者施設、大学、職場等においてキットの特性を踏まえて適正に活用するよう促してまいる。

問 宿泊療養施設における医療的ケアについて
 本県では、昨年4月に宿泊療養施設を設置した当初から、すべての施設に24時間体制で医師・看護師を配置し、体温や呼吸器症状の確認などの健康観察を行っている。その際に異常があれば、直ちに医師が診察を行い、必要に応じ速やかに医療機関へ受診等ができるよう調整を行っているところである。
 また、昨年12月には、宿泊療養施設の全室にパルスオキシメーターを配置し、入所者が各自で酸素飽和度を測定できるようにしている。加えて、今年2月、携帯用酸素吸入器を各施設に配置し、5月には、酸素飽和度が低下傾向にある療養者に対して、医師の判断で酸素投与ができるよう、各施設に2台ずつ酸素濃縮装置を配置したところである。
 県では、これまで、宿泊療養施設には無症状者や軽症者を受入れることとしており、発熱や咳などの症状が出た場合も軽い方が多いことから、投薬が必要な場合は市販薬で対応していた。今回の感染拡大や変異株の影響により、施設ではこれまでよりも基礎疾患を有する重症化しやすい方を多く受入れることとなり、症状が悪化した場合の入院調整の間、医師による処方薬の投与が必要な方が増えてきた。このため、来週中に施設での処方薬の投与を開始することとしている。
  
問 筑豊地域の宿泊療養施設について
 宿泊療養施設の設置にあたっては、地域の感染状況に加え、交通アクセスや住環境・医療環境を考慮し、効率的な運用のための一定規模以上の部屋数などの要件から総合的に判断し、決定している。
 筑豊地域においては、これまでも感染が拡大した時期が見られたが、県全体で見ても感染者数は少なく、また、宿泊療養施設の要件を満たすホテルから協力の申し出がなかったため、これまで設置していない。
 現在の感染状況では、直ちに新たな宿泊療養施設を設置することは考えていないが、今後、筑豊地域において感染が拡大するような状況があれば、再度検討していきたいと考えている。

問 広域接種センターについて
 県では、県内すべての希望する65歳以上の高齢者が7月末までにワクチン接種を受けられるよう、市町村を支援するため、田川市とみやま市の2か所に広域接種センターを設置しているが、会場の規模から、約6万人への接種が可能と考えている。現在のセンターにおける優先接種の対象は、「7月末までに高齢者へのワクチン接種完了が困難」又は「県による集団接種の実施を希望」と申し出のあった6市町の高齢者、約3万人としている。
 また、八女市など他の市町から、「計画どおりに接種が進まずに、7月末までの高齢者の接種完了が困難になりそう」との声があったことから、改めて市町村の要望を調査した。その結果、16市町から要望があり、約3万人をセンターでの接種対象に追加することとした。
 具体的には、直方市、柳川市、八女市、筑紫野市、春日市、大野城市、宗像市、太宰府市、福津市、糸島市、新宮町、鞍手町、桂川町、香春町、福智町、みやこ町の高齢者を新たに対象としている。これら16市町の高齢者の方の予約開始日は、6月15日とし、16日から接種を受けられるようになる。
 また、予約キャンセル等によりワクチンの余剰が発生した場合の対応については、市長会及び町村会とともに「福岡県余剰ワクチン有効活用指針」を策定したところである。この指針に基づき、接種会場の従事者や危機管理・災害対策業務に従事する行政職員等に接種するなど、余剰ワクチンを有効に活用してまいる。
 
問 ワクチン接種の効率化について
 議員ご指摘のいわゆる「宇美町方式」は、住民の皆様は椅子に座ったままで、キャスター付きの椅子に座った接種者が、移動しながら予診と接種を行うものである。この方法は、短時間で多くの方への接種が可能であるほか、高齢者が移動中に転倒する危険性や、立ったり座ったりする回数が減る等、高齢者の負担軽減にも繋がるものと考える。
 一方、予診の時間をもっと長く取ってほしいとの声があることや、ワクチンや注射器を載せたカートを移動する際の転倒に十分注意しなければならないということも聞いている。
 県では、これまで、効率的な集団接種会場の運営に取り組む県内市町村の事例を紹介するweb研修会の開催や、市町村からの個別相談への対応により、市町村を支援してまいった。今後は、県内市町村だけでなく全国の先進事例の情報把握とその紹介に努め、市町村によるワクチン接種が円滑に進むよう、支援してまいる。