2021年(令和3年)12月定例県議会 報告 9

2024-02-14

民主県政県議団 代表質問 登壇者 山本耕一

答弁骨子
問 デジタルアートを支援する取組について
○ デジタルアートは、パソコンやタブレットなどを使って生み出されるプロジェクションマッピングや絵画などの新しい美術表現であり、本県でも、天神中央公園西中洲エリアリニューアルオープンの際に旧福岡県公会堂貴賓館をスクリーンとしてプロジェクションマッピングを投影し、多くの県民の皆さんに楽しんでもらったところである。
○ 県では、両政令市、九州大学などと連携し、2001年から国内外のアーティストの発掘・育成の場として、「アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA」を開催している。

  •  また、九州芸文館では、今年初めてデジタルアート作品公募展を開催した。表彰した作品については、ウェブ上で日本語と英語による解説とともに公開し、国内外へ発信することにより作家のキャリア形成と作品発表の場としている。

○ このような取組を通じて、引き続き、多くの県民の皆さんにデジタルアートの素晴らしさを知ってもらい、アーティストの活躍を応援するとともに、デジタルアートに取り組む方々の活動や発表の場を広げるにあたって、どのような環境づくりが有効なのか、今後、芸術系の学科を持つ大学の関係者などとも協議していく。

問 児童相談所職員の専門性向上について
○ 本県の児童相談所における、勤務経験が3年未満の児童福祉司の割合は、今年4月1日時点で約47%となっている。
○ 県では、児童福祉法に基づき、新任の児童福祉司全員に、虐待を行った保護者への対応や一時保護の権限行使等について研修を行うとともに、5年以上勤務したものを対象に、指導力向上のための研修を実施している。
○ また、県独自に、全ての児童福祉司を対象として、立入調査を躊躇なく実施し、児童の安全を確保するための実地研修を警察と合同で行うとともに、保護者への指導技術を高めるための研修を県外の専門家を招聘し、実施している。
○ 県では、今年4月、虐待の早期発見、早期対応を図るため、「子どもの安全チェックリスト」や「緊急度アセスメントシート」を策定し、虐待疑いなどの事案の緊急性や重症度を把握する取組を始めた。

  •  これを、児童相談所と市町村で連携を強化し的確に運用するため、今年度から、乳幼児健診未受診者への対処など具体的なケースを想定した演習を、児童相談所毎に、市町村の虐待担当職員と合同で実施している。

○ こういった取組により、児童福祉司全体の専門性を高め、虐待を見逃すことなく、子どもの安全を確保する体制の充実を図ってまいる。

問 一時保護所における学習支援について
○ 本県の一時保護所における、昨年度の子ども一人当たりの保護期間は、約18日となっているが、保護期間が2か月を超える場合もあり、学習の遅れが懸念されるところである。
○ 保護期間中、虐待や家庭の状況等から、在籍校への通学が難しい子どもに対しては、各一時保護所に配置している、教員免許を持つ「学習指導専門員」が中心となって、児童指導員や保育士とともに、週6日、1日4時間の学習支援を行っている。
○ 支援にあたっては、担任の先生から提供されたプリント等を活用するなど、それぞれの子どもの学習内容や教材について在籍校と協議しながら、指導を行っている。
  また、

  • ・集団学習になじめない子どもには、居室で指導する
    ・学習習慣がない子どもには、興味を持たせるような教材を使用する

 など、子ども一人ひとりの状況や特性、学力に配慮したきめ細かな指導に努めているところである。
○ 今後とも、子どもの学習の遅れを生じさせないよう、工夫しながら学習支援に取り組んでまいる。

問 福岡県の気候変動の特徴と気候変動に対する所見について
○ 福岡管区気象台の報告書によると、福岡市中央区の観測地点における平均気温は、1890年代以降百年あたり2.45度の割合で上昇しており、これは全国の1.26度よりも大きな上昇となっている。この要因としては、地球温暖化による影響に加え、都市部のヒートアイランド現象の影響が考えられる。年間降水量については、ここ100年あまりで大きな変化は見られないが、1時間降水量30mm以上の大雨の年間発生回数は、本県が位置する九州北部地方では、ここ約50年間で1.5倍に増加している。
○ 将来予測については、今以上の温暖化対策をとらない場合、平均気温は、20世紀末と比べて、今世紀末には4.1度程度上昇すると予測されている。

  •  降水量については、年間降水量では今後も大きな変化はないものの、今世紀末には一日降水量200mm以上の大雨の発生頻度は約3倍に増加、1時間降水量50mm以上の雨の発生頻度は約2倍に増加すると予測されている。

○ 地球温暖化とそれに伴う気候変動は、本県においても、過去5年連続で大雨による災害をもたらしたほか、熱中症の増加、農作物の品質や収量の低下など、既にさまざまな分野で大きな影響をもたらしており、その対策は重要な課題と考えている。

問 農業や漁業における気候変動への適応策について
○ 県では、農業分野において、近年の夏季の高温や大雨頻度の増加などに対応するため、品種の開発や温度上昇を抑制する装置などの導入を支援してきたところである。
○ 具体的には、「元気つくし」や「実りつくし」といった夏季の高温に強い米や、播種の期間が長く、降雨の合間に播種できる大豆といった品種を開発した。

  •  また、野菜や花などでは、日焼けや温度上昇を抑制するための遮光ネット、畜産では、畜舎の温度上昇を抑制する換気装置やミスト噴霧装置の導入を支援してきたところである。

○ 漁業分野においては、水温や潮流など海の状況の変化により、魚の生息場所やノリの生育に影響が生じる。

  •  このため、県では、筑前海において、3日後までの水温や潮流の予測情報を漁業者に提供し、漁場の選定に活用されているところである。
     また、有明海においては、10分間隔の水温・塩分といった海の状況や、気象台の予報、ノリの生育情報などについて、漁業者がスマートフォン等で一括して把握できるシステムを導入しており、ノリの種付けや摘み取る時期の決定に活用されている。

○ 県としては、今後とも、こうした品種や技術開発、漁場の情報提供などを行うことで、農業者や漁業者の経営安定を図ってまいる。

問 関門連系線の拡充に関する知事の考えと国の取組について
○ 今後、脱炭素社会の実現に向けて、さらに再生可能エネルギーを導入していくためには、広域的な電力融通を可能とする地域間連系線の増強が必要であると考えている。

  •  そのため、県においては、これまで、国に対し、地域間連系線の制約解消に向けた働きかけを行ってきた。

○ 国においては、送電線の空き容量を有効に活用し、送電量を増やすため、

  1. 平成30年4月から、火力、太陽光等電源ごとにフル稼働を前提とするものではなく、過去の利用実態をもとに、空き容量を算定する見直しを行ったことに加え、
  2. 同年10月からは、緊急時用に確保しておいた枠を、事故時には瞬時に遮断する装置を用いることにより、平常時にも活用することとした。

○ 国のこの方針に従い、九州電力は、一昨年4月から、関門連系線における再生可能エネルギーの最大送電量を約105万kWから約135万kWへ30万kW程度拡大させたところである。
○ さらに、今年5月には、国が来年度策定予定の広域連系系統の長期方針の中間整理において、九州・中国ルートの地域間連系線の増強に向けた整備計画の具体化について検討を進めていくことが盛り込まれたところである。
○ 県においては、今後とも、国に対し、広域的な電力融通を可能とする、この整備計画の早期具体化について、働きかけを続けてまいる。

問 再生可能エネルギーの普及拡大、主力電源化への考えと実現に向けた取組について
○ 気候変動に影響を与える温室効果ガスについては、エネルギー部門からの排出が8割以上を占めていることから、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの普及拡大、主力電源化の徹底は、脱炭素社会の実現に不可欠であり、県が取り組むべき重要な課題であると認識している。
○ これまで県では、再生可能エネルギーの普及拡大に向け、県有施設への太陽光発電設備の導入をはじめ、本県が独自に開発した「再生可能エネルギー導入支援システム」の活用などにより、市町村や民間事業者による導入を積極的に支援してきた。

  •  その結果、県内各地で太陽光発電が導入されるとともに、苅田町の新松山工業団地における3社の大型バイオマス発電施設や、中小水力発電などの様々な施設の導入が進んできた。
     再生可能エネルギーの導入容量は、平成22年度末の30万kWから令和2年度末には269万kWへと、約9倍にまで大きく拡大した。

○ 今後も、これらの取組を進めるとともに、響灘沖一般海域における洋上風力発電については、促進区域への早期指定を目指してまいる。

  •  また、先月、北九州市で運用を開始した、再エネの余剰電力から水素を製造、輸送し、各地で利用する実証事業の取組も進め、再エネの更なる普及拡大に努めてまいる。