2023年(令和5年)2月定例県議会 報告 9

2024-02-14

民主県政県議団 代表質問 登壇者 岩元一儀

答弁骨子
問 新型コロナの5類見直し後の入院・外来診療及び後遺症相談窓口について
○ 感染症法上の位置付けが5類に変更されると、入院・外来診療については、インフルエンザなど他の疾病と同様、幅広い医療機関で対応することになる。

  •  しかし、現状では、新型コロナを受け入れる医療機関は限定されており、県民の命と健康をしっかり守るためには、医療機関における診療・検査体制の構築が必要である。
  •  このため、県では、1月27日の国の方針決定後直ちに、県医師会などの医療関係団体等の意見を聞き、5類変更に伴う課題を整理してとりまとめた要望書を、1月30日に国に提出した。

○ 具体的には、入院・外来診療については、

  • ① 幅広い医療機関において外来診療・検査に対応できるよう、また、介護が必要な高齢者や妊婦等の特別な配慮を要する方も含め、適切な医療機関に入院できる体制を構築できるよう、感染対策や患者の受入れに伴う負担に見合った医療機関への財政支援を行うこと
  • ② 感染拡大時においても、重症者等の受入れが滞ることのないよう、当面の間、入院調整を行うために必要な財政支援を行うこと
  • ③ 感染拡大時に、救急搬送困難事案が増加しないよう、患者待機ステーション等を開設できるようにするとともに、必要な財政支援を行うこと
  • ④ 医療費の費用負担については、高額な治療薬などの医療費の負担能力に
  • よって、人の命が左右されないよう、十分に配慮すること

 また、後遺症の相談窓口については、

  • ⑤ 受診・療養方法や後遺症等の問合せ・相談に対応できるよう、当面の間は相談窓口の設置に対する財政支援を継続すること

といった項目について、要望を行ったところである。
○ 国は、来月上旬を目途に、患者等への対応や医療提供体制について具体的な方針を示すこととしており、県としては、この方針を踏まえ、5類への見直しに適切に対応してまいる。

問 高齢者施設における施設及び従事者向けの感染対策について
○ 感染症法上の位置付けが5類に変更されても、重症化リスクの高い高齢者を守るためには、施設における基本的な感染対策が必要だと考えている。
○ このため、先ほど述べた要望書の中で、高齢者施設に対して、感染対策に伴う負担に見合った財政支援を行うよう、国に要望したところである。
○ また、国は、今後、高齢者施設における感染対策について具体的な考えを示す予定であり、この内容も踏まえ、施設への指導を適切に行ってまいる。

問 本県の非正規雇用労働者の平均時給について
○ 福岡労働局が、中小事業者を対象として抽出により実施している「令和4年福岡県賃金実態調査」によると、パートタイム労働者の県全体の平均時給は1,015円となっている。

  •  地域別では、北九州地域が1,078円、筑豊地域が1,022円、筑後地域が993円、福岡地域が989円となっている。

○ 産業別の平均時給については、厚生労働省が抽出により実施している「令和3年毎月勤労統計調査」によると、「教育、学習支援業」、「医療・福祉」等が高く、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」等が低くなっている。

問 平均時給の地域差等に対する認識と最低賃金1,000円以上の実現に向けた取組について
○ さきほどお答えしたとおり、県内4地域のパートタイム労働者の平均時給は、最大で9%、89円の開きがある。
○ 県内の平均額を上回る北九州地域、筑豊地域では比較的時給が高い「医療、福祉」、「輸送用機械器具製造業」への従事者数の割合が高く、平均を下回る福岡地域、筑後地域では、比較的時給が低い「卸売業、小売業」、「食料品製造業」への従事者数の割合が高い状況にある。
○ 地域ごとの平均時給の差は、その地域の産業構造が要因の一つと考えられることから、産業全体の賃金の上昇に資する最低賃金の持続的な引上げが重要であると認識している。
○ 次に、最低賃金の引上げに向けた県の取組についてである。

  •  昨年11月、国に対し、「最低賃金を着実に引上げ、早期に1,000円以上を達成すること。引上げにあたっては、厳しい状況に置かれている地域の中小企業・小規模事業者への総合的な支援を強力に実施」するよう、桐明議長とともに、羽生田厚生労働副大臣に要望を行った。

○ また、県内の公労使、それぞれの幹部がお集まりになる賀詞交歓会等において、最低賃金1,000円を目指し、引き続き国に提言・要望をしていく旨を表明したところである。
○ なお、中小企業の賃上げの実現に向けては、物価上昇に見合った、適正な価格転嫁を促進することが重要である。

  •  価格転嫁しやすい環境づくりを進めるため、県が呼びかけて、国の関係機関や経済団体、労働団体など13団体で、パートナーシップ構築宣言の促進を含む「価格転嫁の円滑化に関する連携協定」を早急に締結する。

○ 今後は、国に対し、この協定の参加団体の状況も伝えながら、一層の施策の充実を働きかけていくとともに、県独自の「チャレンジ応援補助金」や「生産性向上補助金」などについて、宣言企業への加点措置を行うこととしている。

  •  こうしたことにより、価格転嫁が円滑に進むよう、しっかり取り組んでまいる。


問 平均時給に差のある地域、業種に絞った取組について
○ さきほど申し上げたとおり、平均時給の差は、地域による産業構造の違いが要因と考えている。このため、地域や業種にかかわらず、県内全体で賃金水準の底上げを図ることが重要であると考えている。
○ 賃金引上げに向けた支援策としては、生産性向上に資する設備投資を行い、事業場内の最低賃金を引き上げる場合にその設備投資の費用の一部を助成する「業務改善助成金」や、非正規雇用労働者の正社員化や賃金引上げなどの処遇改善を実施した場合に一定額を助成する「キャリアアップ助成金」が活用できる。
○ 県では、こうした国の賃上げ支援策を県内企業に最大限活用していただくため、昨年度から県内4地域で福岡労働局との共催による説明会や社会保険労務士による無料の個別相談会を実施しており、これまで計25回開催し、424社にご参加いただいている。

  •  また、「県中小企業生産性向上支援センター」に、今年度から新たに「デジタル支援ユニット」と「宿泊業支援ユニット」を設置し、専門アドバイザーによる伴走支援や設備導入等に対する助成を行うなど、県内中小企業の生産性向上の取組に対する支援を強化したところである。
  •  県としては、今後とも県内企業に各種支援策を十分活用していただけるよう、きめ細かに取り組んでまいる。

○ 賃金の引上げに向けては、本県経済を牽引する産業を育て、未来につながる経済成長を実現していくことが重要である。

  •  県では、引き続き、商工会議所、商工会や中小企業団体中央会などを通じ、丁寧に情報を発信するとともに、県内雇用の8割を担う中小企業の新たな事業展開や経営改善の取組、生産性の向上を強力に進めてまいる。


問 本県及び外郭団体が雇用する労働者の賃金について
○ 県では、事務補助を行う会計年度任用職員の1時間当たりの給与額が、現在、979円となっているが、正規職員の給与改定に伴い、来年度から

  • 1,006円となる予定。

○ また、公社等外郭団体では、現在、26団体のうち、7団体が1時間当たり1,000円を下回っている。このうち2団体は、4月以降に改善される予定であるが、5団体は、引き続き下回ることが見込まれている。

  •  これらの団体に対しては、県の給与改定の状況をお知らせするとともに、改善の余地がないか、経営状況を踏まえた検討を促してまいる。


問 支援機関のアウトリーチの取組について
○ 生活に困窮されている方は、複雑に絡み合う問題を抱えて、支援を求める声を上げにくく、外部からも状況が見えにくいことが少なくない。支援機関や地域が協力してアンテナを張り、生活困窮者を発見し、アウトリーチで支援することが必要である。
○ 県の自立相談支援機関においては、相談を待つだけではなく、町村役場での出張相談やこども食堂の巡回訪問などを行っているところである。

  •  今後も、地域における関係機関とのネットワークの強化を図り、生活困窮者の早期把握に努め、必要に応じて訪問や声かけを行うなど、アウトリーチでの取組を充実させてまいる。


問 重層的支援体制整備事業の取組状況と包括的支援体制の必要性について
○ 社会福祉施策は、これまで、高齢、障がい、子ども子育て、生活困窮などの世代や属性に応じて、それぞれの部局で専門的に実施してきた。
○ 一方、8050(はちまるごうまる)問題やダブルケアなど、個人や世帯が複数の課題を抱え、地域から孤立している事例など、既存制度による支援だけでは対応が難しい事案が顕在化してきている。

  •  こうした中、平成29年、社会福祉法が改正され、市町村は住民の複合的な課題に対して、多様な主体が参画し、相談者の世代や属性を問わず包括的に支援が提供される体制を整備するよう求められている。

○ こうした体制整備を進めるため、国は、昨年度から「重層的支援体制整備事業」を創設した。本県では、今年度、久留米市など5市町が取り組んでおり、この事業の実施に向けた準備に7市町が取り組んでいるところ。
○ この事業で行う相談支援では、市町村に支援コーディネーターを配置し、民生委員、ケアマネージャー、子どもの学習支援を行うNPO法人などの地域の多様な主体が参加する支援会議において、ケースごとに関係者の役割、支援方針の検討を行い、支援計画を作成してアウトリーチを含めた継続的な伴走支援を行う。
○ 実施市町では、相談者に対して複数の機関が、伴走型でつながり続けることで相談者との信頼関係が高まったり、地域との関わりの中で相談者の関心に沿った居場所の提供ができるなど、支援の幅が広がってきている。全ての市町村において、このような包括的な支援が提供できる体制が整うことが必要であると考えている。

問 包括的な支援体制整備のための支援について
○ 県ではこれまで、市町村向けの「重層的支援体制整備事業実施の手引き」の作成、市町村の各分野の担当者を一堂に集めた説明会の開催などの支援を行ってきた。
○ 市町村からは「国や県の支援機関、民間団体等との支援体制構築がむずかしい」という声もあったため、今年度は、9か所の保健福祉環境事務所ごとに設置している「ひきこもり支援者等地域ネットワーク会議」の場を活用し、市町村の各分野の担当者、自立相談支援機関、社協、地域包括支援センターなど多様な支援機関職員を交えた支援事例の検討を行っている。
○ 昨年度設置した県庁内関係部署で構成する「住民包括的支援体制整備連絡会議」においては、各分野の支援機関・団体等の支援概要をまとめた分野横断的なリストを作成中である。今後、これを活用するなど、市町村と各分野の専門的な相談支援機関との関係が構築され、包括的な支援体制の整備が進むよう支援してまいる。