2017年6月定例県議会 報告 その5

2024-02-14

二、代表質問

◎大規模盛土造成地の所在調査・マップの公表  (知事に質問)

本県はなぜ、10年間も大規模盛土造成地の所在調査に着手しなかったのか。

国は2006年の宅地造成等規制法の改正に合わせ、大規模な盛土造成地の把握とその危険性の確認を実施するよう地方公共団体に通知。しかし、2007年のガイドラインでは、盛土造成地を「宅地ハザードマップ」として公表するとしたため、風評被害や地価の下落が懸念され、全盛土造成地の危険性の確認を行うとなっていたため、その調査費用の負担も課題となっていた。
 その結果、一部の団体しか着手しなかったため、国は2012年にガイドラインを改訂、危険性とは無関係に単に造成地の所在を明確にするため、「宅地ハザードマップ」を「大規模盛土造成地マップ」に改称。危険性の確認も、擁壁の異常や地盤の亀裂などにより、確認が必要な調査箇所を絞り込むことができることとした。
 この国の動きを踏まえ、調査に慎重であった地方公共団体も実施に向け動きを始め、本県も、昨年度、予備調査を行った。

市町村単独でも大規模盛土造成地の所在調査の実施が可能であったにもかかわらず、いずれの市町村もこの所在調査に着手していないのはなぜなのか。本県は、この所在調査を行うよう県内市町村に何らかの働きかけを行ったのか。

県は2007年度から、県内の市町村との会議で、大規模盛土造成地の所在調査・マップの公表に関し、その調査の目的や必要性のほか、国の支援制度やガイドラインについて説明し、その中で、市町村が独自に調査を実施できることも説明。
 しかし、市町村も県と同様の懸念があり、着手する市町村は無かった。

どのような計画と手順で、大規模盛土造成地の所在調査を行い、マップを公表するのか。

県は昨年度、造成地の概略の位置と規模を把握する予備調査を実施し、今年度から2020年度まで4年間かけ本調査を行う。この調査は、地形図や航空写真の現在と過去の比較により盛土の範囲を推定し、現地で確認するという手順で行い、市町村単位でマップを作成していく。
 このマップは、住民の宅地被害に対する関心を高め、万が一の被害の防止や軽減につながるよう作成するもので、公表は、住民が日頃からの宅地の点検に活用されるよう、市町村と連携し効果的な周知・広報を継続して行う。

本県が、大規模盛土造成地の所在調査に、なぜ10年もの遅れをとったのかを検証し反省し、強い防災意識と危機管理意識を持って、迅速に防災関連施策を実施していくべき。昨年度から始めた事業は、4年間もかかるが、遅れを取り戻すため、期間を短縮できるよう全力を尽くすべき。

※知事は、同じ答弁の説明に終始し、4年間の事業期間は着実に進めるための期間との説明を行った。


◎地域共生型介護の推進について  (知事に質問)

2012年2月議会の田辺議員の質問に対して、宅老所に関する調査をし、研究会で今後の県の支援のあり方検討すると答弁した、その調査結果と結論について。

県は2012年度、県内の宅老所及び市町村に対するアンケート調査を実施。宅老所事業者、市町村職員などで構成する「宅老所のあり方等に関する研究会」を設置。宅老所の現状と課題の把握、行政の支援について検討を行った結果、

  1. 県内宅老所の9割は、介護保険サービスの指定を受けた通所介護事業を行いながら、介護保険サービス以外の自主的なサービスとして、「食事の提供」、「宿泊」などを提供、
  2. 経営実態として、収入は介護保険サービスが平均85%を占め、収支は7割の宅老所が黒字決算、
  3. スプリンクラー等の防災設備が整備されていないものが多く、防災面で不安、
  4. 行政に関与されるよりも、できる限り自由な運営を行いたいという意向が強い、ことが判った。

 研究会において、行政の支援は、経営に対する支援よりも、「利用者やその家族の安全・安心確保の防災設備の整備に対する支援等を行うことが望ましい」との結論に至り、県は2012年度から先行開始した防災設備等の整備に対する補助について、スプリンクラー整備を補助対象に追加するなど拡充し、宅老所の設備整備のニーズに合わせて27年度まで実施。

宅老所の機能に対する県民のニーズに対する知事の見解と、県独自の宅老所支援制度を創設すべき、その考えは。

通所を中心に、宿泊・訪問を組み合わせて提供するサービスや機能は、介護が必要となっても在宅生活を継続するために必要。宅老所をモデルとして、介護保険制度の中で「小規模多機能型居宅介護事業所」ができている。
 県は、市町村が地域の高齢者のニーズを踏まえて策定した計画に基づき、この小規模多機能型居宅介護事業所を整備できるよう、福岡県地域医療介護総合確保基金を活用し、財政的な支援を行っている。その結果、事業所数は2009年4月の102か所から、本年4月には271か所へと増加。引き続き、高齢者とその家族が安心して利用できる介護基盤の整備に努める。

宅老所に対して、柔軟に、行政が過度に関わらない形で、支援をしていくことこそ、地方行政や知事の責任、何もしなくていいということがいいことではない。